飯沢耕太郎

"「写真を見て下さい」と頼まれることがある。

〜そうやって作品を見せられていつも思うのは、似た様な印象のものが多いということだ。
何人か続けて写真を見せられると、さすがにうんざりさせられてしまう。

〜被写体になっているのは自分の身の回りの半径5mくらいの出来事、
あるいは日常的な行動範囲の中でたまたま出会った光景である。
家族、彼、あるいは彼女、さもなければ自分自分が登場することもよくある。
それらをカラー写真(6*7くらいの判型が多い)で淡々と、中間距離で、
あまり感情移入しないで撮影していく。

〜写真の並べ方にも特徴がある。
ある特定の被写体が登場すると、次にはそれとあまり関係ないカットが来る。
一つのテーマに観る人の関心が集中しないように、適当な感覚をおいて写真が
「撒き散らされて」いるのだ。流れがうまく作れなくなると、決まって空とか花とか、
あまり重たくない、適当に気持ちが良くて毒にもならない「つなぎの」イメージが挿入される。
そうやってなんとなく写真が流れていって、なんとなく終わってしまう。"


《ファットフォト2005 11-12月号 飯沢耕太郎【写真批評家の日々 vol.6】より》