いがいたい

おくりびと見て、人が死ぬっていうことの感覚がじわじわ襲ってきた。最近よくじいさんばあさんは元気かってお母さんに聞く。元気みたいでよかった。
昨日まで息しとって動いとって、笑って、温かくて、それが急に全部なくなってただの肉の塊になる。そんなこと当たり前に知っとったけど、豚とか牛とか鳥なんかのとは全く別もので、人間勝手なもんだなと思ったけど、それでも絶対的に違うもんで、虚無感ってのはこういうことを言うんな、と思った。あんな気持ちになったのが初めてだったので、どうしていいかわからなくて、ただひたすら涙を流しながら布でおでこをふいて、なでた。見つめることしかできなかった。視覚と聴覚が異様に冴えていた。
私が行った時すでにたくさんの人がお酒を飲んで、騒いでた。お通夜もお葬式も行った事がなかったので、こんなに五月蝿いものなのかと思った。人が死んでいるのに、と思ったけど、今思えばずっとめそめそしているわけにもいかないし、みんな大人なんだった。目に焼き付く死人の顔と耳に入ってくる笑い声や足音の騒音、それだけであとは全部空っぽ。
いつも思い出すのはゴムみたいな感覚。死人の肌はゴムのよう。色は青いような黄色いような、見た事ない色だった。
人生の転機。だと思う。いまだに何だか死んだような気はしない。けど確実にこの世界にはいなくて、本当にどうなるんだろう死んだ人の魂は。ねえ。なんだか不思議です。今日も死んでる人がいるんだよなー何だろうねこれ。何が言いたいんだろうねこれ。家族死ななきゃいいのになあ。やだな。ほんとやだ。じいさんばあさんお父さんお母さんお姉ちゃんまさやみんな死なないでほしい。死なないでほしいです。